
1 終わりの見えないウクライナ紛争
ロシアが、ウクライナに進攻してから早2年を過ぎようとしている。
紛争の様相は、メディア報道では戦闘は膠着状態にあるようだ。
今人気のフランスのエマニュエル・トッド氏の「第三次世界大戦はもう始まっている」を読んでみました。
彼は、明確にウクライナ紛争を始めたのは「プーチンでなく、米国とNATOだ。」と言っております。
それは、「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確な警告を発してきたのにもかかわらず、西側がこれを無視したことが、今回の戦争の要因だと言っております。
日本の国土は、海に囲まれていて、ヨーロッパにおける国家間の民族、宗教に伴う紛争に我々、日本人には実感がないと思います。
過去の歴史の中では、唯一元寇との戦いがありますが、それと、70年前には日本は東南アジア、中国へ侵略し、第2次世界大戦で連合国との戦争に負け、そのあとアメリカに占領された経験があるのみです。
今の日米関係を考えると本当にアメリカと戦争をしたのと若い層から言われても不思議ではないかもしれません。
一方ロシアは、いまだにヒットラーが忘れられず、スターリンが国民を相当数粛清したにもかかわらず祖国を救った英雄なのです。従ってロシアにとって、直接ヨーロッパと対峙することは絶対避けなければならない理由で西側との間に緩衝地帯が必要なのでしょう。
2 ロシア国民の戦争風景
1970年代、アメリカがベトナムと戦争していた時期に私はアメリカに1年程暮らしていました。
アメリカはベトナムと戦争が行われており、紛争の様相も厳しい時期でした。
私の居たテキサスの空軍基地で爆撃機が何度もベトナム空爆のシミュレーション飛行を行っているのを見ていました。
しかし米国内では、戦争をしているとの雰囲気は私には感じられませでした。テレビ報道もありましたが普段の衣食住等に対する制限もなく、普通に生活ができました。
ネットの発達で、ウクライナ紛争の報道は、ベトナム戦争のそれとは比べることなどできませんが、当事国のロシア国民は、自国に爆弾が落ちなければ戦争を肌で感じることはないでしょう。
3 国際世論の論調
西側のメディアでは「プーチンは、ロシア帝国を夢見て、かっての東欧諸国を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。それに加えドイツのヒトラーの暴走と同様な事態になる」との誇張を交えた報道もあります。
果たしてそうなのでしょうか?
またウクライナ人は、「米国を含めた西欧諸国が自分たちを守ってくれる」と思っていたのに、軍の出動までの支援がなかったことに失望しているのではないでしょうか。
ロシアの侵攻が始まると、ウクライナに居た西側の軍事関連の人たちは、武器だけを残し逃げてしまったようです。
ロシアとの戦いはウクライナは正面、西側は後方支援及び武器供与が行われています。
西側とって、ヨーロッパ全土に広がらずウクライナ一国でロシアの侵攻を防ぐことを望ましいく考えているのでしょう。
4 日本は軍事強国に?
アメリカはベトナム戦争に負け、東西の冷終了後「世界の警察官」の地位を失い、紛争を抑えるだけ力を失ってしまったのです。
それが世界各地の紛争の多発に繋がったのでしょう?
ヨーロッパの秩序は、将来的にはアメリカに頼ることなく、アメリカを抜きに構築すべきなのではないでしょうか?
ウクライナ紛争の実相はそれを見せているように思います。
では、東アジアの我が日本は、中国との軍事強国への競争が必要なのでしょうか。
亡き後藤田正晴氏が、官房長官時代に「省益に捕らわれず国益を考えよ」と官僚に言われたそうです。
それ同様、これからの日本は「1か国の国益より国際社会の公益を優先する」考えで国際貢献等を通じて国家間の信頼関係を構築することがより一層求められると考えます。それが戦争抑止に繋がるのではないでしょうか。
日本、米国、中国の軍事力の均衡ではなく、相互信頼を高める外交努力を願うばかりです。
先日、テレビでウクライナの紛争以前の光景と現在とのそれを見て、戦争とはいかに愚かなことをするのかと、何方が勝利を得ても、双方の被害は計り知れないものになることを知る必要があるでしょう。
最後に故田中角栄氏のことば!
「戦争を知っている世代が政治の中枢にいるうちは心配ない。平和について議論する必要もない。だが、戦争を知らない世代が政治の中枢となったときはとても危ない」